クマサカガイという貝がいる。
自分の殻に、貝殻や小石、珊瑚のかけらなど、色々なものを付着させながら成長する。自身の薄く脆い貝殻の補強とか、敵から身を守るための擬態とか、柔らかな砂地を移動するカンジキの役割ではないかとか。
その理由には諸説ある。いずれにしても、機能のためだけというには、あまりにデザイン性が高い。個体によって、身に着けるものの選択にこだわりさえあるらしい。

目を見張る色彩、謎めいた模様、驚きのシェイプ。
鳥にも、魚にも、虫にも、花にも。
ひょっとすると、自然界には「装う」という欲求があるんじゃないか。

そして、むかしむかし人間は、この美意識に触発されて、おしゃれをし始めたに違いない。