博士の遺言

2025年10月1日、ジェーン・グドール博士が亡くなりました。
チンパンジーが道具を作り・使うことを発見した動物行動学の権威であり、自然環境の保護と次世代教育の重要性を説き世界中を飛び回り続けた彼女。91歳、アメリカで講演ツアーの滞在先ホテルで、眠るような最期だったそうです。

学歴のなさや女性であることを理由に、心ない偏見や侮辱を投げつけられようと、静かにまっすぐに信念に向き合い貫いた人。「争わない抗い方」を、身をもって教えてくれる人でした。「私は、闇の時代に希望の光をともすために、この世に遣わされたのだと思う」と博士。「誰にとっても不可能に見えることでも、諦めて受け入れるより戦っていたい」と。「どうせ変わらない」と諦めるのではなく、「きっと変えられる」と信じて「行動する」こと。「希望」が人々を動かし、団結させ、未来を変える。まっすぐな眼差しで語る彼女自身にこそ、人は希望を見出してきたのだろうと感じます。

あらゆる人は、地球に対する影響力、世界を変える力をもっている。
「地球を壊すのか、癒すのか。私たちは毎日、選択している」。

グドール博士は、よく「Planet earth」という言い方をします。彼女の目は人間の作った「世界（World）」を超えて、すべての生命の源である地球を見ていた。イギリス人や欧米人ではなく常に「地球人」として生きた。その大きく広い視点を見倣いたいと思います。

死後の公開を条件に録画されたインタビュー動画『FAMOUS LAST WORD』がNetflixで配信されています。彼女の遺したことばが、多くの人の心に届きますように。彼女のしなやかな強さ、決して諦めない精神、寛大さ、ユーモアが、この先もずっと受け継がれていくことを心から祈ります。